英検1級面接対策|実践的な準備方法と練習のコツ

英検1級対策

はじめに

前回の記事では、英検1級の面接突破のために必要なレベル感と、そのための対策のポイントを9つの要素に分解してご紹介しました。

1. 言いたい単語や表現を知っている
2. 英文として理解できる文法を知っている
3. 英語だとわかる発音ができる
4. 話したい内容が決まっている
5. 話したい内容が要素として整理されている
6. 基本的な「ロジカル」と言われる順番に要素を組み立てて話せている
7. 相手の質問に対する答えを考えられる(相手の質問を理解できるリスニング力も必要!)
8. 相手の質問に反射的に答えられる
9. ゆっくりでも落ち着いて話せる

筆者自身は日本語でも口ベタで、英検の面接で英語で話していた時も
話しているうちに何を話しているのか分からなくなってしまう、
相手の質問に対して、遠まわしに答えてしまって結局答えになっていない、
なんてことがありました。

そこで上記の9つもの要素に分けてはいますが、基本戦略としては
「いかにシンプルな英単語や文法を組み合わせて話すか」
といったシンプルな作戦です。

出来る限りの対策をして二次試験に臨みたいとは誰しもが思うところですが、変に完璧主義になるあまり時間切れになってしまうという状況は避けたいです。

今回は、この9つの要素をもとにした準備と、筆者が面接に合格するために実践した勉強法をご紹介します。

面接対策として準備しておくべきこと

どんなに緊張しても即座に出てくる表現のストックを増やす

  1. 言いたい単語や表現を知っている

面接のときに避けたいのは、頭が真っ白になって何も話せず黙ってしまうことです。
そのような事態に陥らないようにするために、基本的なことながら、口をついてすぐ出てきてくれる単語や表現のストックを作っておくことは非常に有効です。
どんなに緊張していてもこれ以上簡単にしようがない単語やフレーズを使って、自信を持って話せるようにします。

まずおさえておいていただきたいのは、基本の7つの動詞を使いこなせるようにすることです。

7つの基本動詞とは、get, do, have, make, go, take, beの7つです。

おそらく、これらの動詞はもう見覚えがありすぎて、ど忘れするということは無いのではないでしょうか。
それでもなかなか奥深く、使いこなすことが出来れば様々な表現が可能ですし、うろ覚えの難しい単語を思い出そうとするのとは違い、素早く口をついて出てきます。

あまりに簡単な動詞なので不安に思われるかもしれませんが、スピーキングに不慣れで焦って何を言っているのか自分でも分からなくなってしまったり、何も話せず黙ってしまうのが一番良くありません。

自信を持って話す第一歩として基本動詞を7つマスターする、というのを試してみてください。

参考:『たった7つの動詞ではじめる奇跡のすらすら英会話』

※ただし、この基本動詞は詰まって黙ってしまうシーンで重宝しますが、スピーチや質疑応答の際は同じ単語を何度も使いすぎないように注意してください。もっと具体的で明確な動詞が思いついたら言い換えるようにしましょう。

シンプルな英文を頭の中ですぐに組み立てられるようにする

2. 英文として理解できる文法を知っている

1の基本単語や表現と同様に、言いたい内容が文章としていかにすぐ口をついて出てくるようにするかが肝心です。
英検1級の筆記試験を突破したのですから、基本的な文法の知識は問題ないと言っていいでしょう。
しかしスピーチの構成も話す内容も決まっているのに、言葉選びや英文の組み立てに手間取ってうまく話せない、ということがあるかもしれません。

そんな時、

S T V + α

を意識して文章を作ってみてください。意味は S=主語、T=時制、V=動詞 です。

なかなか英語が話せるようにならない理由の一つに、「日本語で考えた文章を英作文するのに時間がかかってもたつく」ということがあります。

日本語でも時事問題をスピーチしようと思ったら、かなり難解な文章になるのではないでしょうか。日本語と英語とではご存知の通り語順が違うので、英作文には労力がかかります。

ただでさえガチガチに緊張している面接のときに小難しい文章を英訳してすらすらと話そうと思ったら余計に緊張してくることうけあいです。

そこで、まずは「簡単な英文でいいんだ」と開き直ってください。

日本語で考えず、とにかく英語でSTVに当てはまるようにまず主語と動詞を言い切ってしまう。その時にそれは過去?現在?未来?のどこなのか、時制を決めてください。そして他の情報はどんどん追加していけばシンプルでも言いたいことがきちんと相手に伝わります。

参考:『英語が2日でスラスラ話せる 1秒英会話』

美しい発音よりイントネーションを意識する

3. 英語だとわかる発音ができる

面接では採点基準のひとつにpronunciationがありますが、面接で必要な英語らしさとは、ひとつひとつの発音の正しさというよりはイントネーションにあると思います。

TED talkでカナダの英語の先生も指摘しているように、英語の発音は厳密には不規則なので、ネイティブのように話したかったらイントネーションをマネするべきだということです。

日本人が英語を話しているのを聞くと、どうも棒読みのような、平坦な、どこで一文が終わるのかいまいち分からないという感想を持ったことがあるかもしれません。

この日本語とは違う点を意識しないと、聞き手が分かりづらいと思ってこちらの意図が伝わりづらく高得点がもらえない恐れがあります。

細かい発音を気にするよりも、イントネーションやアクセントを意識して練習するようにしてください。

参考:『聞ける!話せる!英語力3カ月トレーニング』

「スピーチの理由が思い浮かばない!」を無くす

4. 話したい内容が決まっている
5. 話したい内容が要素として整理されている

スピーチでは、5つのトピックを見た瞬間、そのうちのひとつのトピックについて

キーアイディア(意見の根拠) +具体例

のセットを2つ挙げられるかどうかで決まります。

理想は「これ見たことある!」と準備していたトピックからキーアイディアと具体例をパッと思い出せることですが、何が出題されるかは自分ではどうにもなりません。できるだけ多くのトピックについて準備しておくのも重要ですが、大切なのはその場で対処できること。

そのため、準備としては

「見たことないトピックばかりだけど、このタイプの質問ならあの理由を2つ使おう!」と思いつくことが出来る状態にしておくことです。

そこでおすすめしたいのは、

キーアイディアをラベリングして記憶し、トピックの傾向ごとに使って話を膨らませる。

というものです。
ここで言っているラベリングとは、キーアイディア(根拠または理由)を概念化して、名前をつけておくことです。

図書館の本棚のように、情報を分野毎にラベリングして整理しておくことで、当日必要な時にすぐ引っ張り出せるようにします。

例えば、

インターネットは検閲されるべきだと思うか?

というトピックに対してYesの場合、理由を2つ挙げます。
『14日でできる!英検1級二次試験・面接 完全予想問題』では、理由を

1.子供とその他の無防備な個人に有害な情報を見せないようにするため。
2.人種差別的な表現や過激主義的な思想を抑止するため。

としています。

このようにトピック毎に理由を覚えようとすると異なるトピックでは使えず、また一文が長く暗記量が多いです。

そこで、この2つの理由をそれぞれ

1.弱い立場の人の保護
2.差別抑止

と、簡単な概念にして覚えておきます。

そうすると、もしもインターネットの検閲以外の全く異なるトピックが出てきた場合でも「弱い立場の人の保護」や「差別抑止」を理由とすることができそうです。
この覚えられるくらい簡単にしておくことをここではラベリングとしています。
このラベリングのストックを増やしておくのです。

ここまで短くしておけば、暗記のハードルがグッと下がった気がしませんか?

まず、トピックを見た時にラベリングからキーアイディアを2つ決めて、話す際にSTVを意識して文章を膨らませていけばいいのです。

このラベリングの良いところは、教育、メディア、政治…と、分野が違っていても応用が利くところです。

筆者は、対策本で使われているキーアイディアをトピックごとに見ていき、トピックパターンと回答パターン(ラベリング)で共通したものをエクセルでまとめておきました。

このようにラベリングを覚えてすぐ出てくるように準備しておけば、トピックを見てもキーアイディアが思い浮かばず頭が真っ白、という事態は避けられます。

お手持ちの対策本に載っているトピックとキーアイディアから、トピックのパターンとラベリングを洗い出してみてください。
どんなラベルにするかは、ご自身の覚えやすさで決めるといいと思います。

繰り返しになりますが、スピーチ対策のゴールは

トピックを見たときに、それに対するキーアイディア+理由を少なくてもふたつパッと出てくること

です。
面倒でも一度はひとつひとつラベリングして、単語カードを作るなどしてしっかりと暗記しておきます。

参考:『14日でできる!英検1級二次試験・面接 完全予想問題』

自己紹介とスピーチのテンプレを暗記する

6. 基本的な「ロジカル」と言われる順番に要素を組み立てて話せている

まず、自己紹介は聞かれることがほとんど決まっているので、事前に作成して暗記しましょう。

どんなに緊張していても、出だしである自己紹介をきちんと覚えておいて何があっても話せるようにしておけば、だんだん落ち着いてきて余裕が出てきます。

ちなみに筆者は『14日でできる!英検1級二次試験・面接 完全予想問題』を参考に以下の内容を盛り込んだ30秒くらいの自己紹介文を作成し、フルーツフルイングリッシュというプロが英作文を添削してくれるサービスを利用して、文法的なミスがないか確認しました。

  • 名前
  • 職業と簡単な仕事内容
  • 仕事で英語を使っているか
  • なぜ英語の勉強をしているか
  • 住んでいる市。試験会場までどうやってきて、どれくらいかかるか。
    (個人情報保護からか、おそらく聞かれない)
  • 普段の日曜日の過ごし方
  • 最近の趣味

最近ではDeepL WriteやChat GPTなどのツールを使えば手軽に添削が出来ると思います。

そして次にスピーチのテンプレートの暗記です。

基本的に「ロジカル」とされる書き方・話し方は以下の型に則っています。

  • イントロ(自分の意見)
  • ボディ(意見の理由+具体例をセットで2、3個)
  • 結論(意見を繰り返す)

筆記試験でもこの型を意識していた方も多いのではないでしょうか。
先に結論、サポート、結論繰り返し、という非常に分かりやすい構造です。

しかしながら、面接の時に覚えておくのがこれだけだと心もとないです。
ラベリングでボディになる理由を思いついたものの、英語を話し慣れていないと必要なフレーズが出てこず、せっかくの理由を簡潔に伝えられないです。

そこで、スピーチの中で決まり文句のように使えるフレーズをできるだけあらかじめ用意しておいて、本番ではそこにサポートをぶっこめばなんとか形になるようにしておきます。

以下が、筆者が面接のために頭にたたきこんでおいたテンプレです。

<イントロ>
①(topic例:メディアの検閲)is a controversial topic.
②Many people believe (質問肯定or 質問否定).
③However, my answer to this question is (Yes or No).
④I have several reasons to support my opinion.

<ボディ>
1,
①理由(キーアイディア)は一文で簡潔に。優しい単語、少し抽象的でも可。
②その説明を一文で。
③For example具体例or もう少し詳しく
④①の繰り返し。(省略可)
2,
①~④を1セットで2つ

<結論>
So,from these reasons, I think ○○ with the statement.
できれば言い換えて、理由を繰り返すか要約する。

ご自身にとって覚えやすいフレーズ、使いやすい表現で置き換えてみてください。

ポイントは、一文をだらだら話さず抽象的でもいいから簡潔に言い切ってしまうこと。

緊張のあまり言っているそばから理由を忘れてしまっては次に続きません。
また、試験官に分かりやすいのも重要です。
出だしを簡潔にして、説明・具体例を追加していきます。

参考:
『14日でできる!英検1級二次試験・面接 完全予想問題』
『1分間英語で自分のことを話してみる』

30秒以上話せるようにする

7. 相手の質問に対する答えを考えられる(相手の質問を理解できるリスニング力も必要!)
8. 相手の質問に反射的に答えられる

Q&Aは配点の4分の1を占めていて、きちんとスピーチで話した内容の通り自分の考えを持っていないと答えられない、なかなか厄介なパートです。

一方で、万が一スピーチで時間がない、表現できない、など満足のいくようにまとまらなかったとしても、このQ&Aのパートで挽回する事ができるという良い面もあります。

Q&A(質疑応答)では、

  • スピーチで挙げた理由に対する質問を予測すること
  • 沈黙を作らないように会話を続けること

の2点を意識してください。

一つ目の「質問の予測」については、過去の東洋経済オンライン記事を参考にしています。
それによると、講演後の質問は以下の3つの大別できるようです。

  1. 確認のための質問:発言の意味を相手が確認したい場合にする質問
    「このような理解でよいですか?」という質問に対して

    答え方の例
    「おっしゃる通りです。」
    「言い換えればこういうことです」
    「基本はその通りです。異なる点があるとすれば・・・」
  2. 検証のための質問:具体性、詳細などを知ろうとする質問
    「○○の場合はどうなりますか?」という質問に対して

    答え方の例
    「個別ケースへの回答+基本方針(意見)」

    「具体的な例を教えてください」という質問に対して

    答え方の例
    「Yes/Noなら最初に、Whyなども答えてから肉付けする。」
    ※質問にまず簡潔に答えることに注意。相手が混乱するのでいきなり細かいことを話さない。
  3. 反論のための質問:一見質問に見せかけて、実は異議を唱えている問いかけ
    「根拠をもっと具体的に説明してもらえますか?」という質問に対して

    答え方の例
    相手に寄り添い「ご懸念はもっともです。」から始める。

これは日本語の講演を想定していますが、英検の面接もこの3点でかなりカバーできます。
そこで回答の流れも3点の質問を予測し、あらかじめ決めておきます。

  1. 質問の聞き返し、wellなど間をおく言葉を入れて考える時間を作る
  2. 質問を上記の3つのどれかに仕分けて回答
  3. 相手が納得しているか確認
  4. 質問と回答を要約する。重要なキーワードや主張を繰り返す

あまり突っ込んだ質問が来るとあたふたしてしまうかもしれませんが、例えばなぜ面接官がわざわざ確認しているのでしょうか?
もしかするとあなたの主張がユニークで、単純にもっと理由を知りたい、と思っているのかもしれません。

なお原則として、スピーチでYesの立場をとったらフォローアップでもYesの主張を貫いてください。
面接官が反論をしてきても、まあ、そういう考え方もあるけれど、というのはいいですが、最後は自分の主張を繰り返してください。

ちなみに筆者が受けた際の印象としては、「もし~だったら」という質問が多かった気がします。
特に倫理的な話のトピックで(尊厳死についてでした)
「もし私だったらどうするか?」という自分ごととして考える質問がありました。
このようなトピックについての掘り下げは、ラベリングを作成している際に一度はしておくようにしましょう。
1トピックについて1分だけでも集中して思いつく意見を書き出してみる、というやり方も効果があります。

繰り返し演習する

9. ゆっくりでも落ち着いて話せる

これまで面接を切り抜けるための準備の方法をご紹介してきました。
ラベリングしてみて、本番ですぐに出てくる状態にしておかなければいけません。
そのためには実践練習あるのみです。

おすすめはオンライン英会話で講師を前にして本番と同じ形式で時間内にスピーチ、Q&Aに回答をすることです。
オンラインで気軽とはいえ緊張感を持って試験を受けることに慣れておくと、本番で焦らないですみます。

この時に面接中の時間管理やどこを改善すべきかのフィードバックが重要になってくるため、オンライン英会話は英検対策がしっかりとできる専門の英会話教室をおすすめします。
英検の出題形式を理解している講師がほとんどいないところだと、その説明を自分で講師にすることから始めなくてはいけないので効率が悪いです。

対策に特化しているところは講師のレベルも高く、ツボをおさえているので面接突破に必要な改善点を的確に教えてくれます。ただ価格が高めなので、短期集中と割り切って受けるといいと思います。

ちなみに筆者が受けたのはマイチューターというオンライン英会話教室です。
「スピーチの時にUhなどのfiller wordsが多い」「質問を聞き返す時にはこんなフレーズを使ったら印象がいいと思う」などすぐに使えるアドバイスを多くもらえました。

また、オンライン英会話を受講するときは授業をPCのボイスレコーダーやスマホなどで録音しておくことをおすすめします。
自分のイントネーションや使いがちな英文のくせをチェックします。(はじめは自分の声を聞くのは苦痛かもしれませんが慣れます…)

最近ではELSA speech analyzerという強力なツールがあるので、そこで文字起こしした内容をチェックしたり、客観的な数値で自分の今のスピーキングのレベルと弱い部分を確認することができます。

まとめ

以上、対策と勉強法をご紹介しました。
まとめると、

  1. どんなに緊張しても即座に出てくる表現のストックを増やす
  2. シンプルな英文を頭の中ですぐに組み立てられるようにする
  3. 美しい発音よりイントネーションを意識する
  4. 「スピーチの理由が思い浮かばない!」を無くす
  5. 自己紹介とスピーチのテンプレを暗記する
  6. 30秒以上話せるようにする
  7. 繰り返し演習する

面接は難しい部分もありつつ、ツボとコツをおさえた準備をしておけば十分合格点を取ることができます。
難しい筆記試験を通過して、あと一息です。
ぜひここに書いた方法を参考にして、念願の英検一級に向けて頑張ってください!

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