多読だけじゃない!ラダーシリーズで四技能全て伸ばす方法

英語学習

はじめに

英語学習において良い教材選びは非常に重要です。しかし書店やネットで見かけると常に斬新な勉強法があり、「これをやったら英語ができるようになるかも!」と期待を膨らませて買ってはみたものの、読んで満足してしまって実践まではいかず英語力は伸びないまま…。
そんな経験があるのではないでしょうか。はっきり言って勉強法や各スキルの教材は多すぎて、目移りしてしまうのも当然です。
今回は、数多くある教材を実際にどう使いこなしていったら効率よくスキルを伸ばしていけるのか、筆者の具体的な学習を通してご紹介します。
リーディングやリスニングをそれぞれ分けて勉強するのは時間がかかりすぎます。
そこでひとつの教材を徹底的に使い倒すことで四技能を全てを伸ばします。
今回は英語学習者におなじみのラダーシリーズを活用します。

ラダーシリーズは有名な古典や伝記を英語学習者向けにやさしい英語でリライトしたもので、文法からリスニングまで幅広いスキルを網羅していることや、レベルに合わせた豊富な教材が揃っていることが特長です。
もともとリーディング力を鍛えるために多読できるようにと作られたものですが、近年は同じ内容のオーディオブック版も充実していて、一冊を一度だけ読んで終わりにするにはもったいないです。

効果的に英語力を伸ばすには、結局何から始めるのが一番効果的?

ここでは『クリスマス・キャロル』を使い倒します。
どのタイトルにするかは好みによるので、「『クリスマス・キャロル』が一番だ!」などとは全く思っていません。今、春ですし。笑
大事なのは繰り返し聞いても飽きの来ない内容かどうかです。オーディオから入るので、リーディング力に自信があっても無理にレベルの高いものから始める必要はありません。クリスマス・キャロルはレベル2です。
筆者の場合、きっかけはクリスマスに初めて映画を観たこと。
それまでは、タイトルはもちろん、あらすじもなんとなくは知っていたけれど、きちんと原作を読んだり映画を観たりしたことはありませんでした。
児童向けのお話だと思っていたところ、いい大人ですが予想以上に感動してしまいました。

クリスマス・キャロル(1938)

ここで突然ですが、英語の四技能のうち、何が一番得意(マシ)ですか?
もしかしたらリーディングと答えた人が多いかもしれません。筆者もそうなのですが、目で見てじっくりと考えながら、必要なら意味を調べながらと自分のペースのできるので、どれかと聞かれればリーディングが得意かもしれません。
しかしもしそれで現在、他のリスニング、ライティング、スピーキングが伸び悩んでいるなと思ったら、ちょっと考え方を変えてみましょう。
週刊ダイヤモンドの特集で紹介されていた脳科学者によると、「まずは耳で音として繰り返し聞くことが効果的」だそうです。
正しい英語の音を繰り返し聞いて発音を身につけてから初めてアウトプットすること。
英語の文の流れをとらえて丸ごと覚えてしまうまで、とにかく同じ文を繰り返し聞き続けなければならない。

といった内容で、なるほど、脳を音で浸すということですね。

「聞き流すだけ」の英語教材で上達しない理由、言語脳科学者が教える危ない英語教材の見分け方
今度こそ英語を身に付けようと一念発起したものの、書店には数多くの書籍が並び、過去にもあまたのベストセラーがある。どの教材を使えばいいのか。使ってはいけない教材はあるのか。言語脳科学者の酒井邦嘉・東京大学教授が危ない教材の見分け方を指南する。

そこで早速、音声に集中するならオーディオブックが良さそうと考え、年間の聴き放題プランを契約しているaudiobook.jpでクリスマスキャロルを探したところ2種類見つかりました。
ひとつはアメリカで放送されたラジオドラマをそのまま収録したもの。ネイティブが楽しめる作品なので、英語も容赦ないスピードです。最初は「児童文学でストーリーも分かってるし、なんとかついていけるだろう」と思っていましたが甘かった。笑
英語がとにかく早口、さらに学習者向けのクリアに話しているのとは全く違うんですね。面白そう!これが聞けるリスニングのレベルになりたい!でも全然聞き取れない…!笑

クリスマス・キャロル
アメリカで放送された傑作ラジオドラマ音源をそのまま収録!ハリウッドのスターたちが織りなす名作の世界をお楽しみください。アメリカで放送された傑作ラジオドラマをそのまま収録。原作の抜粋ではなく、ラジオドラ...

もうひとつは、今回使うラダーシリーズ版。レベル2(英検3級以上)だし、こちらは逆に優しすぎるのでは?それにラジオドラマと違って一人のナレーターによる朗読だから臨場感にも欠けそう…。
しかし実際聞いてみると…こちらも面白い!
内容をしっかりと理解しながら聞き進められるというのは楽しいです。
そしてナレーターが上手い!おそらく自分で黙読するときは単調に読み進めてしまいそうなところを、頭の中で登場人物の表情が分かるくらい表現力豊かに話してくれるので楽しい!(なぜか想像の中ではディズニーのドナルド版スクルージ)

クリスマス・キャロル(レベル2)
クリスマス・イブの晩、けちで意地悪、冷淡で人嫌いの孤独な老人スクルージのもとに、7年前に死んだ共同経営者の幽霊が現れる。「これからおまえを3人の幽霊が訪れることになろう」真夜中の鐘の音とともに次々訪れ...

移動やジム、入浴中などで数か月、1.5~2倍速にしていたので何十回と繰り返し聞きました。よく飽きなかったもんです。
それにレベル2で使用語数が少なめとはいえ、長時間聞き続けるのは負荷もあり、また読めば大したことを言っていないのに聞き取れていない箇所もあり、リスニングはまだまだ伸ばす余地があることを痛感しました。

登場人物や有名な単語やフレーズの確認で理解を深める

ここで、クリスマス・キャロルを読み進める(聞き進める)ために知っておくと役立つ登場人物と単語・フレーズを紹介します。
キャラクターをきちんと理解しておくことでストーリーが明確になります。
またクリスマス・キャロルのような名作は特有の有名な表現が数多くあるので知っておくと他の作品で引用された時などにも理解が深まります。

登場人物

Ebenezer Scrooge:本作品の主人公。金貸しをしていてケチで意地悪なみんなの嫌われ者。クリスマスが大嫌いな老人。
Bob Cratchit:スクルージのかわいそうな事務員。労働環境はブラックだが、スクルージとは対照的に家族思いの人格者。
Fred:スクルージの甥。亡くなった優しい母親ゆずりの寛大な心を持ち、スクルージの嫌みにも負けず毎年クリスマスの食事を誘いに来る。
Tiny Tim:ボブの幼い末息子。病気で松葉杖を使っている。

Jacob Marley:7年前に亡くなったスクルージの元共同経営者。生前、苦しんでいる人々に何もしなかった罪の分の重い鎖を身につけ終わらない旅を続けている。スクルージが同じ目に合わないようにクリスマスイブにスクルージのもとを訪れた。

覚えておくと自慢できるかも?ストーリーで使われる有名な表現

“Bah! Humbug!”:主人公のスクルージが甥のフレッドに「メリークリスマス!」と言われた時に返したセリフ。”humbug”でググると候補にすぐクリスマスキャロルがあがってくるほど有名なセリフです。「ふん!くだらん!」との訳が多いですが、単語としては「ペテン、ごまかし」といった意味合いです。貧乏人や病人が多くいる中、誰もかれもがお祝いムードになっているのを皮肉っているようです。
「どこから来た表現なの?」という記事がCNNで上がっています。

Humbug! Where does that word come from anyway? | CNN
The phrase uttered by years of Christmas scrooges across page and screen became popularized by almost endless adaptation...

dead as a doornail「完全に死んでいる」という意味ですが、わざわざ「完全に」というニュアンスを持たせているのがユニークですね。こちらもググるとクリスマスキャロルが候補に出てくるくらい有名な表現です。
BBC Learning Englishでこのイディオムについて説明している動画が面白いのでおすすめ!なんとシェイクスピアがホスト役で、楽しくイディオムの意味や使い方を学べます。
なんでdoornail(びょうくぎ)が出てくるんだと言うと、ドアに何度も打ち付けられてぺしゃんこに潰れてしまった釘の頭が「完全に」お亡くなりになっているように見えるかららしいです。

分からなかった単語を定着させる効率的なまとめかた

単語が聞こえた時にパッと意味が分からないと話しが中断してしまいますよね?
やはり分からない単語はその都度調べておかないといけません。
その時に出来るだけ日本語を介さず画像で覚えるのが有効と聞いたことがあったので、分からなかった単語を画像付きの単語帳形式にしてみました。

自身のリスニングの弱点の傾向を分析する

何十回も聴いた後、ようやく文字を見て確認しました。
そうすると、何十回も聴いたくせに無意識にスルーしている箇所がある!!と言うことに気づきました。
大まかに傾向を分類すると、場面や状況説明、場面の移り変わりや場所の移動、人物描写の3点です。

・場面や状況説明
例:p.19 ”There was a small bell hanging in the room that had not been used for many years.
突如出てきたベルは予想外で、何度も聴いていたのにスルーしてました。

・場面の移り変わりや場所の移動
例:p.91 ”He went into the sitting room and looked at the fireplace.
ここを聞き逃していて次からのセリフが繋がってきませんでした。

人物描写
例:p.30 ”A clear jet of light shone from its head, and it was holding a very long pointed cap under its arm.
ここが全く入っていなかったために、続くやり取りが理解できていなかったです。

セリフだと注意が向くのですが、叙述的な箇所が聞き取れていないために、「どんな容姿のキャラクター」が、「どんな場面」で「いつ」「何を」しているのかが分からなくなるので話しの理解が飛んでしまうようです。
英語の資格試験の勉強をしていると、時々細かいところを聴き飛ばしたり読み飛ばしたりしていいかげんな解釈をして答えを間違える…なんてことをしている意識があったので、まさにこういうことです…。
このような自分のクセを把握しておくのは大切ですね。

英語でストーリーを要約してみる

ここまででリスニングとリーディングのインプットをばっちりしてきました。そこで今度はアウトプットを鍛えるべくストーリーを自分の言葉で要約してみます。
本の要約って、日本語でもけっこう苦労しますよね?
もちろんChatGPTに要約を丸投げすることも可能ですが、自分の能力開発に興味がありますので要約力など能力を伸ばそうと思ったら、やはり面倒なことを避けては通れません。
かといってあんまりみっともない英語をさらすのもナンなので、
自作→DeepL翻訳ツールで修正→ChatGPTでよりナチュラルな表現のアドバイスをもらって修正しました。
ちなみに太字にしているのは自分からは出てこなかった、もしくは出てこなさそうな表現です。

“A Christmas Carol” by Charles Dickens is a touching story about one man’s redemption through the Christmas spirit.
The story began on Christmas Eve, December 24, 1843.
Ebenezer Scrooge was a cold and nasty old man who had amassed a fortune by lending money to others.
He adamantly refused to celebrate Christmas and despised those who did.
Despite the generosity of his nephew and clerk, he remained cold-hearted.
One night, he was visited by the ghost of his late partner, Jacob Marley, who warned him that he would suffer the same fate unless he was visited by three more ghosts; his past, present, and future.
Initially hesitant, Scrooge spent time with each of the ghosts and learned valuable lessons.
They reminded him of the wonder of the Christmas spirit and he realized he had gone down the wrong path in life.
He decided to keep the Christmas spirit in his heart and be kind to others, which brought happiness not only to those around him, but also to himself for the rest of his life.

ちなみにChatGPTに丸投げしたらどんな感じになるのかと言うと、こちらです↓

“A Christmas Carol” is a classic novella written by Charles Dickens that tells the story of Ebenezer Scrooge, a miserly old man who hates Christmas and has no compassion for anyone.
On Christmas Eve, Scrooge is visited by the ghost of his former business partner, Jacob Marley, who warns him that he will be doomed to wander the earth in chains if he doesn’t change his ways.
Marley tells Scrooge that he will be visited by three ghosts, each representing a different aspect of his past, present, and future.
These ghosts take Scrooge on a journey through time and show him the errors of his ways, as well as the consequences of his actions.
Through this experience, Scrooge comes to realize the true meaning of Christmas and the importance of kindness and generosity towards others.
The story ends with Scrooge transformed into a kind and compassionate person who spreads joy and goodwill to everyone around him.

正直、自作の方も他の登場人物との関わりの記述や最後のしめ方は気に入っているのですが、丸投げした方が丁寧に順を追って説明している印象ですね。
自分のは前半は丁寧なのに後半ぶつ切りにされて飛び飛びになっている傾向…。

自分の要約の音読でスピーキング力を可視化する

発音の学習に役立つ画期的なアプリとして一時期話題になった『ELSA Pro』。
現在、このアプリに加えて『ELSA Speech Analyzer』というスピーチを評価してくれるツールを活用しています。
決まったプログラムのあるアプリと違い、Speech Analyzerの方は何でも自分で作成した内容もAIが評価してくれるのでスピーキングの練習に役立っています。
発音はもちろんですが、特にイントネーションや話すスピードについても厳しい採点をくれます。
また最近、元々あった文法や語彙についての評価にChatGPT機能が加わったので、より具体的なアドバイスをしてくれるようになりました。
個人的には即興でのスピーキング力を上げたいのでオンライン英会話の録音をアップロードして確認することが多いのですが、試しに作成した要約を音読して採点してもらいました。
全体としてはこのように評価されます↓原稿を読んだので高めです。

ストーリーについての感想

クリスマス・キャロルは、偏屈じじいになったスクルージが悔い改めて思いやりあふれるおじいちゃんになるという流れですが、人は態度や行動を変えることが出来れば結果も変えることが出来るというのがいいですね。
3人の精霊がスクルージを導くのですが、実際にはスクルージは自分で考え自分が今まで間違っていたことに自ら気付いて良い人間になろうと決意します。
長い間忘れていたけれど、今まで素晴らしい人にたくさん出会っていたことを思い出すのです。
この内省して生まれ変わるというストーリーに心ひかれたようです。

オーディオブックで面白かった場面の紹介

文面で見た時はさっと流してしまう場面でも、音声で聞くことでその面白さが理解できた箇所がいくつもありました。最初のうちはあらすじを追うのにいっぱいいっぱいになりがちですが、何度も聴くと慣れてきます。

例:p.5″If you’re cold, warm yourself at your candle! Right, Cratchit?”
“Yes, sir.

Then write, Cratchit!
Yes, sir.
日本語の音で「ライト」を違う意味でかけているところ。(オリジナルの原作には無い記述のようですが)

p.23″Suddenly the ghost cried out loudly and shook its chains: CLANK! CLANK!
Aghh! cried Scrooge.

ストーリー的には全然大した場面ではないのですが、マーリーが鎖を使ってたてる大きな音にスクルージが恐れおののく叫び声が面白かったです。

今後のレベルアップに向けて:ラジオドラマ版のクリスマス・キャロル

最初に洗礼を浴びましたがこちらも諦めてません。英語上級者になるにはこれくらいは分かるようになりたい!ということで、0.8倍速にして聞いています。笑

まとめ

いかがでしたか?
ラダーシリーズ版『クリスマス・キャロル』をフルに活用して取り組んだ英語学習を紹介しました。
流れをまとめると、
まず音声を脳に浸してイントネーションや発音を確認→文字を見て聞き取れなかったところを確認→分からなかった単語やフレーズを画像とまとめる→英語で要約を作成→自分でも音読→振り返り

ここまでフルフルでやらなくても、一部のみだけ試してみてどんどん教材を変えてもいいと思います。
ただ、一つの教材を使いこなしたことで、「やり切った!」と達成感が得られました。
よかったら、ぜひ試してみてください。

タイトルとURLをコピーしました